2018.07.28

20180620一般質問解説⑤~ソーシャルファームについて

こんにちは、

東京都議会議員(町田市選出) おくざわ高広です。

○本日(7/28)、「都議会だより」が新聞折り込みされていたようですね。私の質問についても取り上げられていて、「見たよ!頑張れ!」と激励をいただきました。ありがとうございます!

○さて、本日の解説は、「ソーシャルファーム」についてです。

○「ソーシャルファーム」と言われてもピンと来ない方も多いと思いますが、それもそのはず。日本では、「ソーシャルファーム」という言葉について、まだ明確な定義がされていません。

一番定義に近い表現として、厚生労働省HP「新しい障害者の就業のあり方としてのソーシャルファームについての研究調査」から引用すると、

「障がい者の雇用を前提とした事業運営システムの下、企業的経営手法を用い、障がい者だけでなく、労働市場において不利な立場にある人々(いわゆる就労弱者)を多数(3割以上)雇用し、健常者と対等の立場で共に働くとともに、国からの給付・補助金等の収入を最小限に定めた組織体」

とされています。

(NPO法人多摩草むらの会・風間代表の似顔絵。私もメラメラ)

○東京都においては、障がい者手帳をお持ちの方が約60万人、若年無業者が約6万人、シングルマザーが約5万8千人、その他にも、ひきこもりの方、発達障がいの方、刑務所出所者や保護観察中の方、がん患者、難病患者、高齢者、ホームレスなどを含みますと、「労働市場において不利な立場の方々が100万人以上いる」と推測されます。障がい者就労については、制度が確立されている(詳細は後述)ものの、その他の就労弱者については制度そのものが存在していない、あるいは支援が届いていないのが現状です。日本においては、「働く」ということが、経済的な自立だけでなく、コミュニティの形成や居場所の創出、ひいては自己重要感の醸成に繋がっており、「働けない」ことは、経済面の困難だけでなく、社会の中で孤立を深めていくことに繋がるケースが指摘されています。

○では、「働く」ことが困難になる理由について考えてみましょう。皆さんは、上述の就労弱者について、どう思いますか?「働けないのは、本人の問題だろう。甘い気持ちを捨てて、早く自立しなさい。」と考えた人はいませんか?過去には、公職の立場でこのような発言をした方もいるくらいですから、そう思われる方がいてもおかしくありません。しかし、本当に本人(個人)の問題なのでしょうか。

○例えば、
・シングルマザーの方からこんな声。「子育てがあるから、フルタイム勤務や残業のある職場では働けないけど、本当はバリバリ働きたい!」
・ひきこもりの方からこんな声。「外に出て働くのは嫌だけど、在宅勤務を許してもらえるなら、プログラミングとか新しいゲームソフト開発とか、やってみたい!」
・がん患者の方からこんな声。「再発のリスクがあるからと、再就職が出来ずにいる。でも、これまで積み重ねてきた経験や知恵を活かしたい、若い世代に伝えたい!」
このような方々の働きたい気持ちを叶える職場は、どれだけあるのだろうかと考えさせられます。

○日本の「働く」は、「仕事内容」や「職場環境」ありきで、それに「人」が合わせるというものでした。確かに、高度経済成長期のような、国全体が同じ方向を向いて、国民全体同じような仕事をしていくことで、経済が発展していく社会にあっては、それで良かったのかもしれません。しかし、今は違います。一人一人が、自分だけの付加価値を生み出し、その付加価値を組み合わせることで、更に大きな付加価値を生み出していく時代です。「人」が持つ能力を最大限生かすために、「仕事内容」や「職場環境」が柔軟に変化していく、それが就労弱者を生み出さない、誰もが輝ける社会へと繋がっていくと考えています。

○さて、話をソーシャルファームに戻します。先述の通り、ソーシャルファームには、明確な定義がありません。都職員の方々は、法律や条例に基づいて行動していますので、定義すらされていないソーシャルファームについて答弁するのは難しいというのは仕方ないことなのかもしれません。そこで、今回は、制度の存在する障がい者就労に的を絞って質問しました。

○障がい者の就労については、①一般企業の障がい者雇用、②福祉的就労(就労継続支援A・B)に大きく分けられます。NHKハートネットHPに分かりやすく掲載されていたので、詳細はこちらをご覧ください。

○一般就労の障がい者雇用については、例えば、民間企業では2.2%という法定雇用率が定められておりますが、平成29年度の東京都の調査では、実雇用率は1.88%(当時の法定雇用率は2.0%)となっており、法定雇用率を達成できていないのが現状です。加えて、障がいの程度も問題視されており、東京都における障がい者雇用を一例にしますと、一般採用試験と試験問題の難易度に差異が見られません。つまり、障がい者の特性を見極め、能力を活かすという考え方ではなく、一般事務が可能な障がい者を選ぶという考え方です。これでは、働くことを希望する全ての障がい者に門戸が開かれているとは言えません。昨年の委員会質疑で、この点を指摘しました。今年から3名、知的障がいのある方の得意な仕事を切り出し、オフィスサポーターとして雇用する取り組みが始まりました。これは評価するところですし、引き続き拡充してほしいと考えています。

○次に、福祉的就労については、質問に先立ちいくつかの事業所に足を運び、お話を伺ってきました。上の表でも分かるように、特にB型事業所の工賃は平均15,000円程度と大変厳しく、障がい者年金と合わせても、自立には程遠いものであるとのことでした。とはいえ、どの事業所も工賃UPのために努力を惜しまず、また利用者さん(職場であるとともに就労訓練を行う場なので、サービスの利用者さんと呼ばれる)の居場所として、地域の方々のボランティア活動の場として、前向きなお話をたくさん聞くことができました。

(クラフト工房LaManoで働く皆様。細かい手作業に集中しています。)

○特に印象的だったのは、

「障がい者雇用と切り出して考えてほしくありません。障害のある人もない人も、それぞれの特性や能力を活かしあって、良いものを作ろうと切磋琢磨しています。うまくいかないときもあります。でも、それって、障害のあるなしに関係ないですよね。東京都にお願いするとしたら、私たちが知らないビジネスのノウハウと私たちだけが知っている福祉的なノウハウを繋ぎ合わせるような、そんなサポートをしてほしいですね。」

という言葉です。

○ソーシャルファームとは、まさにこの視点なのです。これまでの障がい者雇用は、福祉的側面が大きく、与える側(経営者や事業者、行政)と与えられる側(障がい者)という一方的な関係性でした。しかし、今後少子高齢化が進み、社会保障費用が増大し、経済の担い手が減少していく社会にあっては、今の福祉の考え方では必ず立ち行かなくなる時が来ます。であるならば、これまで与えられる側とされてきた方々が、与える側になり得ると発想転換をしなければならないと考えています。実際に、知的障がいのある方が作るチーズが本場欧州で表彰されたり、全社員がひきこもりで在宅勤務のIT企業が出てきたりしています。

 

(多摩草むらの会が運営する「畑deきっちん」)

(クラフト工房LaManoの製品①)

 

(クラフト工房LaManoの製品②)

福祉の対象(与えられる側)から経済の担い手(与える側)への転換。一連のやり取りを通じて、ハードルになるのは、人の心に沁みついた「当たり前(固定概念)」であると痛感しました。「障がい者が生産性のある仕事なんて無理でしょ」という企業経営者、「うちの子は障がいがあるので、仕事は適度に。でもお金はもっとください。」という障がい者の親。ソーシャルファームは、福祉的就労と一般就労の間にある第三の選択肢として、真のダイバーシティ実現(誰もが輝く社会)への過渡期を支える制度になると確信しています。引き続き、「当たり前」をぶち壊す気概を持って、頑張ります。

○最後になりますが、突然の申し出にも関わらず、快く現場視察や意見交換に対応していただきました皆様に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。こちらでご紹介させていただきます。

・NPO法人多摩草むらの会様 →こちら

・クラフト工房LaMano様 →こちら

・一般社団法人ディーセントワールド様 →こちら
・町田ゆめ工房様 →こちら
・KURUMIRU都庁店様、立川店様、錦糸町店様 →こちら

◎未来の東京を輝かせるご意見やご提言はこちらへ◎
194-0022 町田市森野2-2-37 長田ビル102号室
TEL:042-710-3281 FAX:042-710-3282
MAIL:team0938@okuzawa-takahiro.com

一般質問の動画はこちら

【質疑骨子】
○ソーシャルファームの本質は、労働市場で不利な立場にある方々が、就労を通じて社会参画することで、企業の価値や利益をより高めるとともに、新たなコミュニティ作り、多様性への理解促進、再犯防止などの様々な価値を生み出し、より豊かな社会を築いていくことにあります。
○労働市場で不利な立場の方々の中でも、本日は、障がい者雇用に焦点を当てて質問します。
○日本には、障がいのある方の働く場として、就労継続支援施設があり、施設長のお話を伺ってきました。
○利用者の男性を指し、「彼は、知的障がいがあって、問題行動もしばしばありました。でも、「水」に触れることが好きだったから、思い切って、商品の染織物を水で洗う仕事を任せてみたんです。今では、彼の右に出るものはいませんよ。」
○「人の能力や特性を活かした仕事を生み出していく」ことで、誰もが社会に豊かさを与える存在になれることを示すエピソードとして、印象に残っています。
○一方で、ソーシャルファームの概念の認知度は低く、ビジネス的視点で社会課題を解決する意義や成功事例を発信し、その裾野を広げていくべきであると考えます。
○東京都では、昨年度より「障害者雇用エクセレントカンパニー賞」を創設しました。
Q6.受賞企業の価値をより高めるとともに、こうした企業の優れた取り組みを広く波及させるため、東京都の発信力と信頼度を活かしたPRを積極的に行うべきと考えますが、都の見解を伺います。

【答弁骨子(産業労働局長)】.
・エクセレントカンパニー賞では、障がい者の能力開発や処遇改善などを積極的に行う企業の顕彰を行っており、その優れた取り組みを好事例として広く発信。
・具体的には、受賞企業の取り組み内容や企業担当者、障がい者である社員の声などをまとめた写真入りの冊子を作成し、企業等に幅広く配布。
・今年度は、賞の表彰式を、企業や障がい者雇用の支援を行う地域の関係機関、特別支援学校の生徒等が多く集まる障がい者雇用支援フェアの中で開催することによって、受賞企業の注目度を高める。
・同フェアにおいて、パネル展示により、受賞企業の具体的な取組みを紹介する。
・今後も、こうした受賞企業のPRを行うことで、障がい者がいきいきと活躍できる場の拡大を図っていく。

【質疑骨子】
○東京都では、保護観察中の若年者を雇用しています。
○また、総務局においては、知的障がいのある方の特性に合った職務の創出に努め、一般就労で、オフィスサポーター3名を採用したと伺っており、大変評価いたします。
○ぜひノウハウを蓄積し、対外的にも発信していただきたいと思います。

○ソーシャルファームの成功には、一般企業に負けない商品やサービスを提供することが不可欠ですが、一筋縄にはいきません。
○販路開拓も悩みの種です。
○これらを同時に解決できる場として、自主製品魅力発信プロジェクト「KURUMIRU」に期待しています。
○都庁店、丸井錦糸町店、伊勢丹立川店の3店舗がOPENし、平成29年度の売り上げは2,800万円を超え、仲介業者を介して大量受注に繋がったケースもあるとのことです。
○また、一流の店舗と肩を並べ、目の肥えた消費者から受ける評価は一つの試金石であり、出品すること自体が目標の一つになっています。
Q7.「KURUMIRU」はアンテナショップであるとともに、障がい者福祉とビジネスをつなぐハブ機能を有していると考えますが、これまでの成果と今後の取組について伺います。

【答弁骨子(福祉保健局長)】.
・都は、就労継続支援事業所で作られる自主製品の販路拡大や魅力発信のため、平成28年度に福祉トライアル・ショップを都内3か所に開設。
・ショップでは、製品に出品基準を設け、市場で流通する商品としての質を確保するとともに、事業者に対し、流通分野の専門家が、製品開発やコスト管理などについて丁寧にアドバイス。
・出品事業所数は開設当初の121から本年5月末時点で163となり、製品の信頼性も向上。
・企業からもノベルティ向け等の受注が増加。
・今後は、店舗での販売に加え、イベントでの出張販売など、企業や消費者に製品の魅力を知ってもらう機会を増やし、更なる販路拡大や工賃向上を目指す。

 

(KURUMIRU都庁店。オシャレな外観です。)

 

(店内では、ゆめ工房さん一推しの布草履を発見。)

 

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