2019.09.12

経済港湾委員会にて、産技研と就労支援の在り方について質疑

こんにちは、

東京都議会議員(町田市選出)の

おくざわ高広です。

〇一昨日の一般質問に続き、今日は経済港湾委員会の質疑がありました。なんでも質問できる本会議での一般質問と違い、委員会では上程された議案についてしか質問することができません。また、本会議の一般質問では各会派の人数に応じて自動的に時間が割り振られるのに対し、委員会では自己申告で質問をします。

【一般質問の様子】

解説はまた今度。

〇今日の経済港湾委員会では、

独立行政法人東京都産業技術研究センター業績評価報告書について

都民の就労を応援する条例(仮称)の基本的考え方について

の2つが上程されていました。

〇本定例会から委員会においてもインターネット中継が導入されましたので、明日以降録画映像が配信されるとのことで、リンクを貼っておきますが、自己申告した時間が短すぎたため、超早口に…。聞き取りにくいかと思いますので、下記に質問全文を記しておくことにします。

【経済港湾委員会録画映像】

※9/13以降見ることができるはず。

【以下、質疑全文】

【地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター業務実績評価書】
まず、今回の全体評価をみると、中期計画の達成に向け、業務全体が優れた進捗状況にある、ということですが、東京の未来を考えた時に、国内外の都市間競争が激化する中で産技研が果たすべき役割とは何か、という視点を絶えず持たなければならないと考えており、ここで満足せずに更なる高みを目指していただきたいという視点から質問させていただきます。
平成28年度から始まった第三期中期計画では、研究開発事業の体制を強化することを一つの柱にしていますが、なにより研究活動を行っているのは、「人」であることを忘れてはならず、研究員が働きやすい、研究活動に没頭できる環境づくりは非常に重要な要素です。

Q1.業務実績評価書4ページには、研究員のモチベーション向上に資する取組である研究活動へのインセンティブ制度とは、どのような制度であるのか具体的にお伺いします。

A1.
・産業技術研究センターにおいては、各部署ごとの製品化・事業化や特許実施許諾、論文掲載数など前年度の実績を翌年度の予算配分に反映させる「インセンティブ制度」を、平成30年度より新たに導入。
・各部署の努力が予算に反映されることによって、研究活動の活性化と、製品化・事業化数が増加。

今のところ適度な競争環境のもと、研究活動に好影響を及ぼしていることが分かりました。一方で、インセンティブの付与は、ややもすると過剰な競争意識による研究者間での対立や、不正をしてでも成果を残そうという間違った方向づけがなされてしまう可能性もあります。その制度設計には十分留意しながら、研究員のモチベーション向上に資するよう、引き続き、より良い制度として継続していただきますようお願いします。

さて、研究員のモチベーション向上の重要性について述べましたが、そのエネルギーを向けるべき研究開発も資金がなければ続けることができません。日本は、諸外国に比べて研究開発分野への投資が少なく、継続的な研究開発が難しいと言われます。私が以前お話を伺った研究者からは、資金獲得のために費やす時間を研究開発に振り向けることができたら、どれだけ助かるか。現状は、資金獲得のためにスタッフを一名常駐させ、その研究者自身も日々資金獲得のための資料作りや説明へ奔走しているそうです。

Q2.産技研では、外部資金調達を支援しているとのことであり、大変有意義であると考えますが、平成29年度、30年度の実績を伺います。

A2.
・産業技術研究センターでは、中小企業の技術開発の支援に役立つ研究を行うための財源を確保し、その多様化を図るために、外部資金による研究を増やす取組を積極的に推進。
・このため、公的な機関の示すテーマに応募して実施する提案公募型研究や、企業からの委託を受けて実施する受託研究の件数は増加傾向。
・平成29年度は55件で約8千万、平成30年度は58件で約1億1千万円

昨年の経済港湾委員会で都民ファーストの会 鈴木委員からドイツのフラウンフォーハー研究機構の事例が紹介されました。その答弁ではドイツのインダストリー4.0のプロジェクトにおいて民間から外部の資金も活用しながら大きな役割を担っているとのことでした。奇しくも今、東京はソサイエティ5.0という次の時代の技術を活かした社会へと舟をこぎ出したところです。この流れに乗っていただき、引き続き、外部資金調達を支援して、継続的に研究開発をおこなっていくことができるように、取り組んでいくようお願いします。

次に、産技研の役割の一つである試験について伺います。試験は、事業化や製品化を念頭においた場合、必須の工程であるとともに、安全性の証明は製品の武器にもなるものです。日本製品の安全性に対する世界の評価は依然高く、いわゆる日本ブランドは安全性の代名詞とも言われます。

Q3.産技研では、特色ある「ブランド試験」を実施しているとのことですが、国内からどのような評価を得ているのか伺います。

A3.
・産業技術研究センターでは、他の公設試験研究機関では実施例が少なく、本センターの高い技術力を活かした特徴的な試験分野を「ブランド試験」と位置付け、「音響」「照明」「高電圧」なをはじめ、計11分野を設定。
・こうした「ブランド試験」については、利用者アンケートの結果を見ると、都内の中小企業に加えて都外の中小企業からも高い評価をいただいており、利用状況でも過去3年間で依頼試験数が44,991件から49,915件へと増加。

大変高評価をいただいているということであると思います。評価書の22ページを見ると、今後は都産技研の試験方法を国際的な標準化にもつなげる取組を行うことを期待する、と記載されています。一足飛びには実現できないとは思いますが、是非目指してほしいということで、私からも期待を込めて要望させていただきます。
次に、産業技術の開発は、そもそも何のために行っているのか、特に税金を投入してその支援を行う必要性はどこにあるのかと考えますと、それは、産技研で生み出された技術が、社会課題の解決に資するから、に他なりません。社会課題解決と経済活動の両立を果たす企業のことをゼブラ型企業と呼ぶそうですが、産技研からゼブラ型企業が生まれることを期待するものです。中でも、社会的ニーズのあるロボット技術の開発は、これからの東京に欠かせない分野であると考えます。

Q4.最先端技術とりわけロボット技術のショーケースを積極的に行うべきと考えますが、見解を伺います。

A4.
・産業技術研究センターでは、平成27年度より「ロボット産業活性化事業」を開始し、開発したロボットの実証実験やPRのための展示会への出展を積極的に実施。
・平成30年度は、鉄道のターミナル駅で、中小企業と共同開発した警備監視ロボットの実証実験を実施。
・また、東京ビッグサイトで10月に開催された日本最大級の展示会である「Japan Robot Week 2018」など、10件の展示会において、展示とともに実演を行った。
・今後とも、こうした取組を通じて、中小企業の先端技術を結集したロボットを、ユーザーや都民にPRし、製品化・事業化を支援。

先日視察した際に感じたことでもあるのですが、日本のロボットは表情やフォルム、素材などの工夫により、人の温かみを表現しようとしているところではないかと思います。一説によると、日本では、ドラえもんや鉄腕アトムなどのアニメの影響で、人の困りごとを解決してくれるロボット、という観点からロボット開発がスタートしているということです。先日開催されていた超福祉展というイベントでも様々なロボットが展示され、体験できるようになっていたのですが、柔らかな素材を利用するなどの工夫がなされていることが印象的でした。そんなことかと思うかもしれませんが、今後ロボットを最も活用していくのはご高齢の方々になると思われます。その方々がロボットに対して抵抗感なく触れられることや、例えば表情豊かに応対することができるかどうかは重要な観点になるはずです。ぜひ、実証実験に際しては、人の感情についても調査していただきたいと思います。
付け加えると、ショーケースや展示会という小難しい話ではなく、産技研の施設内に当たり前のようにロボットがいる環境をつくることが、よりロボット技術開発を加速させるのではないかなと思う次第です。例えば、分身ロボット「OriHime」を使って、病気などにより外出が困難な方がロボットを遠隔操作して働くことのできる実験カフェの取組があります。例えば、ロボットの部署が入居しているビルの1階の喫茶店などを利用して、そうした実験が出来たら、沢山の方に足を運んでもらうきっかけにもなります。クラウドファンディングで資金調達をしていますが、600万円を超える資金が集まり、入場チケットは完売です。その第一弾の実験を見に行きましたが、会場は国内外の人であふれ、障がいのある人もない人も同じようにお茶と会話と働くことを楽しんでおり、未来の東京をイメージさせる素晴らしい取り組みでした。現在は、施設内の実験にとどまっていますが、ぜひ開かれた実験場として、多くの方に利用いただくとともに、足を運んでいただける場所にしていくよう要望しておきます。
さて、社会課題を解決していくという観点から、区市町村との連携について伺います。日本の中小企業の持つ技術力は大変秀でているものの、よくも悪くも職人気質といいますか、視点を変えると、他の分野の課題解決に資するような技術が埋もれていることが多いと伺います。イノベーションが生まれるための一つの考え方に、新しい切り口から物事を捉えるというものがあります。中小企業のもつ技術を別の角度から捉えるためにも、技術と社会課題を同じテーブルの上に置いてみることが、思わぬ解決策を生み出すと考える次第です。

Q5.産技研では、区市町村との連携協定を締結しているとのことですが、その締結数とあわせて、産技研での研究開発が区市町村の社会課題解決に活かされた事例があれば、具体的に教えて下さい。

A5.
・産業技術研究センターでは、産業振興および中小企業振興を図るため、行政機関や産業支援機関などとの連携協定を締結。
・平成30年度末の締結数は61件にのぼり、このうち、都内自治体とは、11の区と5つの市の合計16区市と締結。
・センターの技術を活用した区市との連携の例としては、区からの依頼によって、工場排水に含まれる規制物質の濃度を環境基準以下に抑制する処理技術にかかる研究を行い、実用化に結び付け。
・この他、区市が主催するイベントでの技術相談やIoTセミナーの実施を通じて、区市の産業振興や中小企業振興に貢献。

一定の成果を挙げていると理解しましたが、これも新しい切り口から物事を捉え直す必要性を感じるお答えでした。これまでの締結では、あくまでも産業振興や中小企業振興を目的とした連携であったのだと思いますが、では区市町村の抱える社会課題に目を向けた時に、どんな解決策が見えてくるでしょうか。例えば、先日視察した際に崖の傾斜を計測して角度変化を送信し危険信号を出す機器がありました。これは、熊本で実証実験中とのことですが、避難指示のタイミングなどに苦慮する自治体にとっては、その機械の精度を高め、土砂崩れ危険地域における警報発出に活かせるはずです。今後、さらに協定締結自治体を増やすとともに、一つでも多くの社会課題と技術のマッチングをおこなうという視点をもっていただきますよう、お願いします。
ここで少し話を変えて、製品開発の成果に着目をしたいと思います。評価書の28ページを見ると、製品開発ラボの入居者の売上高が約6倍を記録したとのことです。これは素晴らしい成果だと思いますが、偶然で終わらせないように検証すべきであると考えます。

Q6.そこで、この成果について要因をどう分析しているのか、伺います。

A6.
・産業技術研究センターは、中小企業が効率的に技術開発や製品化に取り組めるよう、センター内に「製品開発支援ラボ」を設置し、研究・実験スペースとして提供。
・本部と多摩テクノプラザのそれぞれにラボマネージャーを1名ずつ配置し、入居企業の製品開発をハンズオンで支援。
・ラボマネージャーによるセンター活用提案、共同研究提案など支援業務の強化もあり、過去3年間で入居企業の依頼試験及び機器利用の件数は、3,826件から9,526件、入居企業とセンターとの共同研究も2件から6件へ大幅に増加。
・入居企業の売上高については、製品化の時期により変動があるものの、こうした取組が入居企業の売上高にもつながったところであり、引き続き、ラボマネージャーを活用しつつ、入居企業の製品開発を支援。

先ほどの話にも繋がるのですが、中小企業の皆さんは意外と自らの技術や製品の強みに気づいていなかったり、別の切り口から捉える機会が少なかったりということがあります。ラボマネージャーに助言によって、中小企業の持つ様々な強みを顕在化させ、さらなる活用策を打ち出していく事は非常に重要であると考えますので、引き続き、ラボマネージャの動きを活発にしていただきますよう、お願いします。
最後に、東京イノベーションハブについて伺います。平たく言ってしまえば、イベントスペースのような場所があるわけですが、この余白がイノベーションのカギになると言っても過言ではありません。イノベーションは、物事の新しい結びつきや新しい捉え方から、新しい活用策を生み出していくことでありますから、ある技術やアイディアを別の技術やアイディアと交流させる仕掛けが必要になるのであって、その交流を生み出す空間的余白は非常に重要であるということです。

Q7.そこで、東京イノベーションハブがどのように利用されているのか、利用率をお伺いするとともに、今後更なる交流が進むようにどのような工夫を凝らしていこうと考えているのか、見解を伺います。

A7.
・産業技術研究センターでは、東京イノベーションハブとして、中小企業、大学、研究機関、金融機関など、産学公金連携を促進するため、約350㎡のスペースを本部に設置。
・東京イノベーションハブは、センター主体の技術セミナーや交流会のほか、団体や大学との共催による研究会やシンポジウム、センターが後援するイベント等に利用されているが、平成30年度の利用率は24.0%。
・今後は、協定締結機関に働きかけ、大学等のシーズ発表、支援機関や金融機関のマッチングイベントの充実とともに、センターの製品化事例や支援事例の展示などの自主イベントの取組も強化。

利用率が24%というのは、かなりさみしい数字ですね、率直に。先ほど余白の話をしましたが、余白のままにしていては何も生まれません。利用条件の緩和や周知の強化により、まずは多くのかたにご利用いただけるようにしていただきたいと思います。この空間でより多くのアイディアが行き交うほどに、社会がより良くなっていくと私は確信しています。
これまで様々な観点から質問をしてきましたが、産技研のポテンシャルはまだまだ大きいものであると思います。いまは法規制などで実用化できないことや資金不足で研究が進まないこともあるかもしれませんが、そうしたイノベーションのタネを蓄積し、広く社会に発信してほしいと思います。どうしたらできるか、という前向きな発想であらゆる主体を巻き込みながら、イノベーションを生み出していく場所を目指していただくことを要望し、質問を終わります。

【都民の就労を応援する条例の基本的考え方について】
都民の就労を応援する条例の基本的な考え方についてお伺いします。
まず、本条例策定の趣旨から確認していきたいと思います。本条例の中で、最も重要な考え方のベースになっているのは、「ソーシャルインクルージョン」の考え方であると思いますが、このソーシャルインクルージョンという言葉が聞きなれないという方もいると思いますので、その定義を確認しながら、議論の出発点を共有しておくことが重要であると考えます。
ソーシャルインクルージョンという概念は、ヨーロッパでうまれたもので、日本語にすると「社会的包摂」となり、厚生労働省の定義によると「すべての人々を孤独や孤立、排除や摩擦から援護し、健康で文化的な生活の実現につなげるよう、社会の構成員として包み支え合う」こととされています。この概念が提唱された当時のヨーロッパでは、移民の増加や失業率の上昇により、福祉の充実を図っても社会的格差・経済的格差が拡大していく一方で、多くの人が社会的に排除された状態から抜け出せないことが社会問題化していたそうです。そこで、どんな人も社会の一員としてともに助け合う、ことを目指そうという概念が提唱されたそうです。
東京都が目指している方向性の一つにダイバーシティという概念がありますが、ダイバーシティは多様性、つまり人と人は違いがあることを認める概念であり、ソーシャルインクルージョンは、一人ひとり異なる存在として尊重され、全体を構成する大切な一人としてその違いが活かされる概念とされています。福祉保健局では、東京D&Iプロジェクトという取り組みがあり、多様な人々が一緒に協力しながら暮らしていく社会を目指し、障害者雇用の好事例などを発信しています。
少し長くなりましたが、ここで一点確認させてください。
Q1.本条例の考え方の基本理念にソーシャルインクルージョンを取り入れた狙いについて、見解を伺います。

A1.
・条例の基本的な考え方にお示ししたように、就労を希望しながらも様々な要因から就労に困難を抱える方に向けては、都と都民、事業者等が相互に理解を深め、支え合うソーシャルインクルージョンの考え方に立って、就労支援を行うことが重要。
・この考え方を、希望する全ての都民の就労を応援するにあたって取り入れたもの。

少し意訳しますと、一人ひとりに違いがあることを認めるだけではなくて、一方的に福祉の充実を図ろうというものではなくて、「一人ひとりが社会にとって大切な存在であって、その個性を活かして一緒により良い社会をつくっていきましょう」という考え方が根底に流れているのだろうと受け取りました。ここで大事なのは、これまで何らかの理由で社会的に疎外されていた方々も、必要な支援を受けることで、その力を発揮して自立し、より良い社会に貢献していけるということを信じられるかどうかだと思います。これまでの就労支援の在り方と比べると、価値観の転換をしなければなりませんので、これまでの常識に囚われないようにご留意頂きたいと指摘しておきます。特に、テレワークなどで外出せずとも働くことも可能になりましたし、視線だけで動かせる電動車いすなどもありますので、考え方や制度を変えていくとともに、テクノロジーの進歩に対してもアンテナを張っておいていただきたいと思います。

さて、考え方の中身に入っていこうと思うのですが、具体的な施策はこれからだと思いますので、いくつか指摘をしておきたいと思います。
まず、支援の対象についてですが、検討を進める前段階から、就労に困難があると認められる者をどこまで定義するのかというのは難しい問題であったと記憶しています。今回、あえてその定義をしないようですが、なんでもかんでも含めていいものではないと思います。あくまでも、個人の特性や時間、場所の制約あるいは制度の不備などの理由があって、就労に困難を抱えている方が対象なのであって、就職氷河期世代などの特定の世代への支援というのは、この条例の考え方にはそぐわないのではないかと考えています。私も就職氷河期世代の一人ですが、たしかに当時の就職活動は大変でした。しかし、当時の状況が今も続いているのかといえば、そこには疑問があります。機会に恵まれなかったといえばそうかもしれませんが、就職氷河期世代でなくても、同じように機会に恵まれなかった方はいらっしゃいます。むしろ大事なのは、どの世代だろうと、そこに就労を阻む障害があるのであれば、それを取り除こうとする姿勢ではないでしょうか。
一方で、これまでの有識者会議などでも取り上げられていない対象として、いわゆるLGBTの方々がいらっしゃいます。当事者のお話を聞いていると、企業においてまだまだ制度が整っていない、あるいは昇給などにおいて差別的な状況があるなど、明らかに障害があるとお伺いするところです。ぜひ、支援の対象に加えて頂きますことを要望しておきます。
また、就労に困難を抱える者に対しての支援について今後まとめていくものと思いますが、その家族への支援についても検討対象に加えて頂くことも提案しておきます。就労に困難を抱える者の多くが家族と二人三脚での暮らしをしていることも考慮していただきますようお願いします。
支援の対象の議論はここまでにして、では、その対象がすべきこととは何かという点に話を向けたいと思います。都民の役割として、「就労を希望する都民は、就労に向けて自ら進んで取り組むよう努める」とあります。一方で、その機会に恵まれなかったから、希望する就労に結びついていないという現実もあるわけです。例えば、障がいのある方が特別支援学校の就労コースに進もうとした場合、その倍率は○○倍という状況です。先日シンガポールで障がいのある方の職業訓練施設を視察しましたが、企業の協力を得ながらトレーニングの場と就労の場が一続きになっていて、シミュレーションを重ねたうえで正式に就労していくようになっていました。加えて、その施設はとてもオープンな施設になっていて、施設内のスーパーに近所の方々が買い物に訪れているんですね。障がいのある方が立派に働いている姿やトレーニングしている姿を見てもらうことで、相互理解が進むわけです。普及啓発にあたっては、言葉ではなく、実際に一緒の時間を過ごすような取組を進めて頂くように、是非参考にしていただきたいと考えるところです。
とにかく様々な施策を通じて、就労を希望する者自身の能力向上を図ることも大変重要であると思うのですが、最も重要なのは、就労に困難を抱える方が誇りと自信をもって働いていくということだと考えます。これをディーセントワークといって、2009年に国際労働機関の総会において21世紀の国際労働機関の目標として提案され支持された概念です。つまり、就労できればなんでもいいというわけではないということです。

Q2.特に、本条例の柱といえるソーシャルファームにおいては、誇りと自信をもって働き、自立していく事が理想だと思いますが、基本的考え方の中には盛り込まれているのでしょうか、見解を伺います。
A2.
・「条例の基本的な考え方」では、都は、事業者による自律的な経済活動の下、就労に困難を抱える方の就労と自立を促進するため、ソーシャルファームの創設や活動の促進を通じて、就労支援を効果的に実施することを示している。

事業者を通じて、誇りと自信ある働き方を実現していくと理解しました。ソーシャルファームの認証にあたっては、その基準を含めて指針の中で取り上げていくとのことですが、数値目標だけクリアすればいい、そんな基準にならないように留意頂きたいと思います。例えば、雇用された方の心理面での変化など定性的な指標を設定することも有用なのではないかと提案しておきます。また、基準においては、就労に困難を抱える者について規定がなされるものと考えますが、障がい者手帳のように基準となるものがないので、その就労における困難さについては、その実態に応じた基準が示していただきたいと思います。特に、就労に困難を抱えたものが、就労するにあたっては、長期にわたり段階的に定着し、自立していくという特徴があります。対象者が変化していくことも念頭に、一律でスパッと切ってしまうような考え方はなじまないということも指摘しておきます。
また、ソーシャルインクルージョンの考え方と同様に、ディーセントワークの考え方についても根底に流れる考え方として取り上げて頂きたいと要望しておきます。

Q3.さて、ソーシャルファームが機能するためには、事業者の役割が非常に大きいわけですが、これまで就労に困難があると思われていた方と共に働くことが有意義であると事業者に実感してもらわなければ、事業の継続は難しいと考えます。都の見解はいかがでしょうか。
A3.
・就労に困難を抱える方と、他の従業員が共に働くことは、「ソーシャル・インクルージョン」の考え方を実現していく上で重要であり、困難を抱える方のモチベーションや社会参画の意識の向上にもつながると考えている
・事業者にこうした考え方や施策の方向性について理解と協力をいただけるよう普及啓発に取り組んで行くことが必要と考える

最後に、忘れないでいただきたいのは、ソーシャルインクルージョンの考え方は社会全体に浸透されるべき考え方であり、ソーシャルファームの創設は理想の社会への過渡期の制度であるということです。2040年の東京では、どんな企業でも、誰もが自分らしく働くことができるような社会になっていることを願い、まずは都庁自身がソーシャルインクルージョンの考えを体現した就労環境を整えていただきますことを要望し、質問を終わります。

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