こんにちは、
東京都議会議員(町田市選出)の
おくざわ高広です。
〇解説第3弾は、都民の就労を応援する条例、とりわけソーシャルファームについてです。これまでも何度か取り上げてきたソーシャルファーム については、都議選の公約にも掲げていた私の政策の柱です。
そもそも論として、
✔️少子高齢社会に突入する中で、今の福祉施策を続けていくことは現実的に不可能
✔️就労に困難を抱えている方の多くは、もっと自分らしく、もっと能力を発揮できるはず
という問題意識を以前から持っていた私は、その解決策としてのソーシャルファームの必要性や福祉から超福祉への転換を訴えてきました。それが、この度実現する運びとなり、大変嬉しく思うと同時に、その本質が抜け落ちることのないように注視していく所存です。
〇今回の条例案では、就労を希望する全ての都民を応援する、ということで、これまでの就労支援策の単なる拡充とならないように、就労支援の在り方の方向転換をいかにして図るか、を考えていかなければなりません。条例案のベースには、ソーシャルインクルージョンの考え方があるとしていますが、その定義から押さえていく必要があります。東京都が目指している方向性の一つにダイバーシティという概念がありますが、
ダイバーシティは多様性、つまり人と人は違いがあることを認める社会
であり、
ソーシャルインクルージョンとは、
一人ひとり異なる存在として尊重され、
全体を構成する大切な一人として、その違いが活かされる社会
とされています。
〇つまり、全ての都民が自分らしく働き、その能力を発揮していく社会に向けては、就労を希望する者の努力とともに、企業側も多様な働き方が経済的価値に繋がることを実感した上で環境整備をしていく必要があるということです。これまでの一方的に支える福祉から、お互いが歩み寄り、支え合い、より良い社会を共につくっていくという価値観の転換にこそ意味があるのです。
〇今回の質問では、中でもソーシャルファームについて取り上げ、民間投資を促す資金調達を支援すべきと主張しました。行政の手厚い補助があるからやっていける、という経営ではなく、自ら稼いでいく力を養うための支援が必要と訴えたわけです。これに対する答弁では、今後検討する、ということで、議論の俎上に乗せることを約束していただいた格好です。
〇私は、ソーシャルインクルージョンの概念は、就労支援にとどまらず、これからの東京いや日本が目指す社会像であると確信しています。ソーシャルファームの設立を契機に、価値観の転換が加速することを願います。全ては、誰もが産まれてきて良かったと思える社会へ踏み出す一歩なのです。
~以下、質問&答弁~
都民の就労を応援する条例に関する基本的な考え方について伺います。
就労は、経済的な自立を助けるだけでなく、コミュニティの形成、所属などの意味においても、個人の幸せにつながる大きな要素になります。
これまで就労に困難を抱えてきた方々が、一人一人の能力に応じた稼ぐ力を養い、事業者自身も自律的に稼いでいけるシステムをつくり上げ、これまでの福祉に対する考え方を転換することが、結果として都民全体の幸福度を高めることにつながります。
公金に頼り過ぎず、福祉に偏り過ぎず、社会的に意義のある事業に対しての投資を促し、事業者とつないでいくような取り組みも重要な要素です。
Q3.とりわけソーシャルファームについては、就労に困難を抱える者を雇い入れた事業者が自律的に稼いでいくために、その資金調達などにおける支援が必要と考えますが、見解を伺います。
A3.産業労働局長答弁
ソーシャルファームへの支援についてですが、海外のソーシャルファームと呼ばれる社会的企業は、障害者など就労に困難を抱える方を多数雇用しながら、一般企業と同様の経済活動を展開しており、このソーシャルファームの活用により、効果的な就労支援を行うことができるものと考えております。
このため、今回公表した都民の就労を応援する条例の基本的な考え方において、ソーシャルファームを大きな柱と位置づけ、その創設及び事業活動を支援することを盛り込んでおります。
ソーシャルファームへの支援策につきましては、条例制定後に策定いたします指針の中で取りまとめていくこととしており、創設に当たっての資金面でのサポートなどを含め、今後検討してまいります。
〜経済港湾委員会でも取り上げました〜
【都民の就労を応援する条例の基本的考え方について】
都民の就労を応援する条例の基本的な考え方についてお伺いします。
まず、本条例策定の趣旨から確認していきたいと思います。本条例の中で、最も重要な考え方のベースになっているのは、「ソーシャルインクルージョン」の考え方であると思いますが、このソーシャルインクルージョンという言葉が聞きなれないという方もいると思いますので、その定義を確認しながら、議論の出発点を共有しておくことが重要であると考えます。
ソーシャルインクルージョンという概念は、ヨーロッパでうまれたもので、日本語にすると「社会的包摂」となり、厚生労働省の定義によると「すべての人々を孤独や孤立、排除や摩擦から援護し、健康で文化的な生活の実現につなげるよう、社会の構成員として包み支え合う」こととされています。この概念が提唱された当時のヨーロッパでは、移民の増加や失業率の上昇により、福祉の充実を図っても社会的格差・経済的格差が拡大していく一方で、多くの人が社会的に排除された状態から抜け出せないことが社会問題化していたそうです。そこで、どんな人も社会の一員としてともに助け合う、ことを目指そうという概念が提唱されたそうです。
東京都が目指している方向性の一つにダイバーシティという概念がありますが、ダイバーシティは多様性、つまり人と人は違いがあることを認める概念であり、ソーシャルインクルージョンは、一人ひとり異なる存在として尊重され、全体を構成する大切な一人としてその違いが活かされる概念とされています。福祉保健局では、東京D&Iプロジェクトという取り組みがあり、多様な人々が一緒に協力しながら暮らしていく社会を目指し、障害者雇用の好事例などを発信しています。
少し長くなりましたが、ここで一点確認させてください。
Q1.本条例の考え方の基本理念にソーシャルインクルージョンを取り入れた狙いについて、見解を伺います。
A1.
・条例の基本的な考え方にお示ししたように、就労を希望しながらも様々な要因から就労に困難を抱える方に向けては、都と都民、事業者等が相互に理解を深め、支え合うソーシャルインクルージョンの考え方に立って、就労支援を行うことが重要。
・この考え方を、希望する全ての都民の就労を応援するにあたって取り入れたもの。
少し意訳しますと、一人ひとりに違いがあることを認めるだけではなくて、一方的に福祉の充実を図ろうというものではなくて、「一人ひとりが社会にとって大切な存在であって、その個性を活かして一緒により良い社会をつくっていきましょう」という考え方が根底に流れているのだろうと受け取りました。ここで大事なのは、これまで何らかの理由で社会的に疎外されていた方々も、必要な支援を受けることで、その力を発揮して自立し、より良い社会に貢献していけるということを信じられるかどうかだと思います。これまでの就労支援の在り方と比べると、価値観の転換をしなければなりませんので、これまでの常識に囚われないようにご留意頂きたいと指摘しておきます。特に、テレワークなどで外出せずとも働くことも可能になりましたし、視線だけで動かせる電動車いすなどもありますので、考え方や制度を変えていくとともに、テクノロジーの進歩に対してもアンテナを張っておいていただきたいと思います。
さて、考え方の中身に入っていこうと思うのですが、具体的な施策はこれからだと思いますので、いくつか指摘をしておきたいと思います。
まず、支援の対象についてですが、検討を進める前段階から、就労に困難があると認められる者をどこまで定義するのかというのは難しい問題であったと記憶しています。今回、あえてその定義をしないようですが、なんでもかんでも含めていいものではないと思います。あくまでも、個人の特性や時間、場所の制約あるいは制度の不備などの理由があって、就労に困難を抱えている方が対象なのであって、就職氷河期世代などの特定の世代への支援というのは、この条例の考え方にはそぐわないのではないかと考えています。私も就職氷河期世代の一人ですが、たしかに当時の就職活動は大変でした。しかし、当時の状況が今も続いているのかといえば、そこには疑問があります。機会に恵まれなかったといえばそうかもしれませんが、就職氷河期世代でなくても、同じように機会に恵まれなかった方はいらっしゃいます。むしろ大事なのは、どの世代だろうと、そこに就労を阻む障害があるのであれば、それを取り除こうとする姿勢ではないでしょうか。
一方で、これまでの有識者会議などでも取り上げられていない対象として、いわゆるLGBTの方々がいらっしゃいます。当事者のお話を聞いていると、企業においてまだまだ制度が整っていない、あるいは昇給などにおいて差別的な状況があるなど、明らかに障害があるとお伺いするところです。ぜひ、支援の対象に加えて頂きますことを要望しておきます。
また、就労に困難を抱える者に対しての支援について今後まとめていくものと思いますが、その家族への支援についても検討対象に加えて頂くことも提案しておきます。就労に困難を抱える者の多くが家族と二人三脚での暮らしをしていることも考慮していただきますようお願いします。
支援の対象の議論はここまでにして、では、その対象がすべきこととは何かという点に話を向けたいと思います。都民の役割として、「就労を希望する都民は、就労に向けて自ら進んで取り組むよう努める」とあります。一方で、その機会に恵まれなかったから、希望する就労に結びついていないという現実もあるわけです。例えば、障がいのある方が特別支援学校の就労コースに進もうとした場合、その倍率は○○倍という状況です。先日シンガポールで障がいのある方の職業訓練施設を視察しましたが、企業の協力を得ながらトレーニングの場と就労の場が一続きになっていて、シミュレーションを重ねたうえで正式に就労していくようになっていました。加えて、その施設はとてもオープンな施設になっていて、施設内のスーパーに近所の方々が買い物に訪れているんですね。障がいのある方が立派に働いている姿やトレーニングしている姿を見てもらうことで、相互理解が進むわけです。普及啓発にあたっては、言葉ではなく、実際に一緒の時間を過ごすような取組を進めて頂くように、是非参考にしていただきたいと考えるところです。
とにかく様々な施策を通じて、就労を希望する者自身の能力向上を図ることも大変重要であると思うのですが、最も重要なのは、就労に困難を抱える方が誇りと自信をもって働いていくということだと考えます。これをディーセントワークといって、2009年に国際労働機関の総会において21世紀の国際労働機関の目標として提案され支持された概念です。つまり、就労できればなんでもいいというわけではないということです。
Q2.特に、本条例の柱といえるソーシャルファームにおいては、誇りと自信をもって働き、自立していく事が理想だと思いますが、基本的考え方の中には盛り込まれているのでしょうか、見解を伺います。
A2.
・「条例の基本的な考え方」では、都は、事業者による自律的な経済活動の下、就労に困難を抱える方の就労と自立を促進するため、ソーシャルファームの創設や活動の促進を通じて、就労支援を効果的に実施することを示している。
事業者を通じて、誇りと自信ある働き方を実現していくと理解しました。ソーシャルファームの認証にあたっては、その基準を含めて指針の中で取り上げていくとのことですが、数値目標だけクリアすればいい、そんな基準にならないように留意頂きたいと思います。例えば、雇用された方の心理面での変化など定性的な指標を設定することも有用なのではないかと提案しておきます。また、基準においては、就労に困難を抱える者について規定がなされるものと考えますが、障がい者手帳のように基準となるものがないので、その就労における困難さについては、その実態に応じた基準が示していただきたいと思います。特に、就労に困難を抱えたものが、就労するにあたっては、長期にわたり段階的に定着し、自立していくという特徴があります。対象者が変化していくことも念頭に、一律でスパッと切ってしまうような考え方はなじまないということも指摘しておきます。
また、ソーシャルインクルージョンの考え方と同様に、ディーセントワークの考え方についても根底に流れる考え方として取り上げて頂きたいと要望しておきます。
Q3.さて、ソーシャルファームが機能するためには、事業者の役割が非常に大きいわけですが、これまで就労に困難があると思われていた方と共に働くことが有意義であると事業者に実感してもらわなければ、事業の継続は難しいと考えます。都の見解はいかがでしょうか。
A3.
・就労に困難を抱える方と、他の従業員が共に働くことは、「ソーシャル・インクルージョン」の考え方を実現していく上で重要であり、困難を抱える方のモチベーションや社会参画の意識の向上にもつながると考えている
・事業者にこうした考え方や施策の方向性について理解と協力をいただけるよう普及啓発に取り組んで行くことが必要と考える
最後に、忘れないでいただきたいのは、ソーシャルインクルージョンの考え方は社会全体に浸透されるべき考え方であり、ソーシャルファームの創設は理想の社会への過渡期の制度であるということです。2040年の東京では、どんな企業でも、誰もが自分らしく働くことができるような社会になっていることを願い、まずは都庁自身がソーシャルインクルージョンの考えを体現した就労環境を整えていただきますことを要望し、質問を終わります。
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